プログラミングの学習を通して、論理的に、かつさまざまなケースを想定してものを作り上げていく力を育てる
プログラミングの学習を通して身につけさせたいこと。それは、論理的に、かつさまざまなケースを想定してものを作り上げる力、試行錯誤しながら解決法を見出し、最後までやり抜く力です。本学では、社会でリーダーとなる人材に求められる「資質」を高める教育を目指しています。
ITリテラシー教育を通した学生の育成に力を注いでいらっしゃる、近畿大学経済学部 田中敬一先生にインタビューしました。
近畿大学では、2006年度より学内の試験会場でMOS(Microsoft Office Specialist)試験を実施し、毎年多くの学生が受験してきました。その結果、5年連続してオデッセイスクールオブザイヤーの「グランプリ」を受賞することができました。MOS試験はMicrosoft Officeの基本的な操作方法を学習する内容であり、ITリテラシー教育の基礎として1年生を中心に学習しています。
経済学部はオフィスアプリケーションの中でも特にExcelを重要視しており、1年生に続き2年生でも学習するカリキュラムを導入しています。2年生のExcelの授業では1年生のMOS試験への取組みで習得した知識を前提として、より実践的な関数やExcel VBAの学習を行っています。この科目は選択科目であるにも関わらず、2年生のほぼ全員(約700名)が受講している状況です。
2年生のExcel VBAの学習はVBAエキスパートの資格取得を目標にし、Excelをプログラミングにより制御する仕組みを学習しています。ここで得られた知識はExcelを単に集計表として利用するだけに終わることなく、一連の作業を自動化する処理を構築していく力が身に付くと考えています。
私の授業では2009年の後期からVBAエキスパート試験「Excel VBAベーシック」の公式テキストを教科書として採用しています。これまでも経済学部では市販の書籍を教科書としてExcel VBAの授業を実施していましたが、公式テキストはVBAの基礎を身に付けるためのエッセンスが凝縮されていると感じたからです。
プログラムを作るのに、すべての命令を覚えている必要はありません。社会に出て実務で何かをしようとしたとき、いかに多くの命令を知っているかではなく、むしろデータの構造や特性を理解し、どのような処理をどの順に施していくのか、それを考え、自分自身で組み立てて行く力が必要だと思っています。VBAエキスパートの公式テキストはその力を身に付けるのに最適な書籍です。
経済学部では、本格的なプログラミングを学習するのはVBAが初めて、という学生がほとんどです。しかし、後期授業が終了するころには、テキストに書かれていることを活用し、基本的なコードを書けるようになっています。
初めて教科書に採用した2009年度は私が担当する「コンピュータ特修実習Ⅱ」のクラスの50名が対象でしたが、翌年以降、他の先生方での授業でも採用され、現在は200名の学生がVBAエキスパートの公式テキストを使用してExcel VBAを学習しています。
さらに、2010年度からは3年生を対象にしたAccess VBAの「コンピュータ特修実習Ⅳ」の授業でもVBAエキスパート「Access VBA ベーシック」の公式テキストを採用しており、2クラスの約60名の学生が公式テキストを使って学習しています。
約3ヵ月の授業を終え、学生たちはVBAエキスパートを受験しています。
資格試験に挑戦することは学習の明確な目標になっています。また、学内で受験できることから、ともに刺激し合い、さらに上の科目を目指そうという学習意欲の向上に役立っています。
私は授業終了後にVBAエキスパートに挑戦することを勧めています。
資格試験に挑戦することにより授業で扱った内容が確実に自分のものになっていくからです。そして、VBAの基礎をしっかりと習得することで、わからないことがあったときに自分自身で調べる力が身につくと思います。
文系学部でプログラミング教育をする意義は、「Excelの処理を自動化する」スキルを身に付けることにとどまりません。プログラミングの学習を通して、論理的に、かつさまざまなケースを想定してものを作り上げていく力を育てることにあります。
思った通りに動作しなかったときは、試行錯誤しながらその原因と解決法を見出し、成功するまでやり抜く力も育てます。つまり、学生のポテンシャルを高めることにつながります。
VBAエキスパートへの取組みは、本学部における学生への教授の一助になると考えています。
※掲載内容は2011年11月時点のものです。
近畿大学は、80有余年の歴史をもつわが国有数の私立総合大学です。
「未来志向の実学教育と人格の陶冶」を建学の精神としています。
経済学部は、近畿大学建学の精神に則り、人間が生きる上での基本となる財・サービスの生産・交換・消費と、そこから派生する様々な社会経済現象に共通する論理を的確に読み解き、現代社会を生き抜く力を持った人材の育成に力を入れています。