プログラミング教育の現場から

専門技術ではなく
道具としてのプログラミングの重要性を認識してほしい

佐藤 和彦先生
日本工学院専門学校 情報処理科 科長

日本工学院専門学校 情報処理科・情報処理科三年制・Webシステム科 科長。 日本工学院専門学校は、学校法人片柳学園の運営する、情報・マルチメディア・工学・医療・芸術など広範な分野で技術者教育を展開する専門学校。同学校法人は、日本工学院八王子専門学校、日本工学院北海道専門学校と東京工科大学を有する。

貴校へご入学されてくる学生さんについてお聞かせください。

3年前には、キーボードにさわったことがないという学生も珍しくなかったんですが、ここ数年で、入学してくる学生のコンピュターリテラシーは格段に上がっています。学校や家庭で、パソコンに触る機会が増えたからでしょうが、既にパソコン操作ができる学生が多い。マイクロソフト オフィス スペシャリストを入学前に取得している学生も多いんですよ。

ですが、残念ながら学力は下がっていますね。先のインタビューで大岩先生も指摘されていましたが(笑)。でも、一方でパソコンの操作については、格段にレベルアップしているのが現状です。

本校はこれまで、入学してくるすべての学生に対してパソコンの操作を初歩から教育していました。しかしそういったやり方では、学生の「やる気」が下がってしまうという状況が発生しつつあります。がんばろうと思って入学してきたのに、「何だ。タイピングからか…」と言って、がっかりする学生も多い。

入学してくるときには、どの学生も「やる気」に満ちあふれているんですよ。だからこそ本校では、「高校でやった」とか、「僕はできる」という学生に対しては、もっと違う授業を提供したいと思っています。そして、そのときの選択肢として「VBA」を考えています。

貴校での情報教育は?

専門分野の情報教育に関しては、各ベンダー様の認定校になり幅広く取り組んでいます。もちろん、日本VBA協会さんの認定校にもなっているわけですが(笑)。

いろいろな取り組みの中でも、いま「入口教育」というものに注目しています。その一例としては、マイクロソフトオフィススペシャリストを既に高校で取得して、それを持って入学してくるような学生さんについては、持っている資格を授業の単位互換としてしまう。もうその授業は受講しなくても良い制度をつくり、その代わりに「VBA」の授業を受講させるという選択肢を考えています。単純に、「単位が取れたから学校に来なくても良い」と言うことではなくて、「もっと別の内容の授業をやりましょう」という方向に進めたい。そしてそれは、発展的なものでありたい。だからこそ、「VBA」の授業を導入することを考えています。今年度は実現できなかったので、来年度からはそういった方向になるように、今準備を進めています。

現状の高校の情報教育は千差万別で、レベルがばらばらのようです。今後は、高校での情報教育の客観的な指標として、「資格」が重要な位置を占めてくるだろうと考えています。例えば、マイクロソフト オフィス スペシャリスト、J検(情報処理活用能力検定)、情報処理技術者、VBAエキスパートといったように、高校もきちんとしたレベル指標になる資格を利用し、さらに学生にひとつの達成感を持たせてあげるべきだと思っています。

専門学校業界全般の動きとしての「資格」は?

専門学校での授業としては、多くの学校が資格を取らせる方向で進んでいますね。
『知識面での指標として国家資格・公的資格』、『現場での即戦力としてベンダー系資格』といった感じです。近年では、多くの情報系の専門学校が、ベンダー系資格の試験を取り入れています。

ベンダー系資格については、学術としてだけではなく、現場で今何が求められているかというニーズを的確に表現することが可能という側面もあります。例えばIBM、Microsoft、Oracleなどの資格取得を推奨して、取得者を評価している企業も多いので、その現場での利用価値として、専門学校でも取得させているところが多いというわけです。

先生ご自身として、VBAとの出会いは?

かなり昔の話になってしまうのですが、以前働いていたシステム開発会社では、SUNのワークステーション上でマンションの管理コストや管理費の積立金を計算するシステムを作ったんです。 ただ、SUNのワークステーションを多数の営業所に設置するわけにはいかない。それで、フロントエンドの部分をどうするかというところで、Excel を利用してプログラミングをしました。

「この物件については、何年後にいくら修繕費が必要で、そのときに積立金はいくらになっていますよね。お客さん」と、視覚的に理解してもらえるようなグラフをExcel上で表示させるプログラムを作ったんです。Excelのグラフであれば、グラフの要素をドラッグして、数字を逆算させることもできますしね。そのころは、Excelのバージョン4ですので正確に言いますとVBAではなくマクロでしたね(笑)。

しかし、このときはすごく衝撃を受けました。こんな事、COBOLでは実現できないし、インターフェースや操作性に関してはとにかく素晴らしい。これは、かなり前の例なのですが、そういったエンドユーザー側のニーズというのは昔も今も変わらないのではないかと思います。エンドユーザーとしての使い勝手を踏まえたプログラミングというのは、これからもっともっと活用されるんじゃないかと考えています。

エンドユーザープログラミングについてどのように思われますか?

以前、CGを駆使して考古学を研究されているある大学教授の講話を聴いた際に、「プログラムというのは道具である」といったようなことをお話されていて、感銘を受けたことがあります。実際に、その先生も考古学という学問の上で、CGを扱う道具として、プログラミングをされているそうです。

私も、プログラミングは一部の技術者のものではなくて、もっと一般の方が活用できる『道具』であるべきだと思うのです。また、教育の立場から言うと、プログラミングというのは、情報教育の中のひとつの項目であると感じています。

プログラミングをする側でも、もっといろんなスタンスの人がいた方がいい。「この言語をマスターしていなければ」とか「この知識がわからなければ」いけないといったような事を言う人がいますが、決してそんなことはないと思っています。もっと身近に考えて、入りやすい所から入って、必要に応じてそれを深めていくというやり方も良いのではないかと思っています。

たまたま、仕事の中でVBAを知って、「あ、プログラミングでこんなこともできるんだ」と、便利さや楽しさを知って、そこから知識を深めていって、エンジニアを目指すという人がもっと沢山いて良いと思うんです。そういった意味でも、身近なところにあるVBAがもっと普及することは、社会的な意義があるのではないかと感じています。

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※監修:大岩 元(慶應義塾大学環境情報学部教授)/作成:株式会社 オデッセイ コミュニケーションズ

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