こんな具合なんです…
「…そのオーグチさんから新しい開発案件を頼まれたんだけど…」
説明を続ける星くんを見つめながら、岬さんはなぜか、ニヤリと謎の微笑み浮かべます。
そうこうしているうちに、泉先輩が戻ってきます。
星くんは先輩も交えて、もう一度最初から、小口さんの開発案件について説明しました。
「…とまあ、こんな具合なんです…」
説明を終えた星くんは、泉先輩と岬さんの顔を交互に見つめました。
「ええーっ。CSVデータの取り込みなんて、VBAでどーやってするんですか??」
岬さんが開口一番に叫びました。
「それもそーだけど、今、開発中のすべての案件がいったん凍結になるってことを、
業務部のメンバーに伝えなきゃ…。
これは部長から、朝のミーティングで話してもらったほうがよさそうね…。
あと開発スケジュールも、全部見直す必要があるわね…」
泉先輩も、苦々しそうにつぶやきます。
「…岬さん、CSVデータの取り込みに関しては、家で調べてくるので明日まで待ってくれるかな…。
業務部メンバーへの告知と、スケジュールの引き直しについては…
すみません先輩、お手数をおかけします…」
星くんは、申し訳なさそうな顔でいいました。
「…はあ、しょうがないわよ。
星くんが悪いんじゃないんだし…。
それにしてもよりによって、…あのオーグチさんの依頼とはね…」
泉先輩は肩をすくめて、フーッとため息をつきました。
「わかりました星さん。
じゃあ細かいシステムの打ち合わせは、明日お願いします。
定形文の差し込み処理マクロは、今日、配布しても構いませんか?」
「さっき、見せてくれたやつだね。
あれはもう、完成してるから配布してオッケーだよ。
…あ、ボタンの追加と、オリジナルの定形文の削除を忘れないでね!」
星くんは岬さんに、念押しします。
岬さんは、テヘッと舌を出しました。
「(今日は久しぶりに、あいつのマンションに寄ってくか…)」
星くんは窓の外に視線を移しながら、ボンヤリとそう考えました。