こんなの作ってみたんですけど
「どうですか星さん?こんな感じで?」
岬さんが、定型文の差し込み処理を実行し、実行結果を星くんに確認してもらいます。
「うん、完璧だよ。
じゃあ…あとは処理の呼び出しボタンをシートに配置して、とりあえず完成にしよう。
あとは実際に使ってもらって、要望があれば微調整していけばオッケーだ」
星くんは、岬さんの作ったコードを眺めながら心の中でつぶやきます。
「(実際、岬さんがいてくれて大正解だったな…。
俺ひとりではとても、これだけの開発案件をこなしきれないもんな…。
…ま、うかうかしてると、そのうち彼女に開発リーダーの座を奪われかねないけどな…)」
席に戻ろうとする星くんに、岬さんが声をかけます。
「あ、星さん。
定型文のサンプル、こんなのも作ってみたんですけど…」
そういって、別のプロシージャを実行します。すると…、
『星さん。今度の日曜日、私の家で一緒にVBAの勉強をしませんか?』
…と書かれた定型文が、文書の冒頭に差し込まれました。
ブホッ…!!
激しく星くんが咳きこみます。
星くんは一瞬、心臓が止まるかと思いました。
「おーい!!星、ちょっと手が空いたらこっち来てくれ…」
目を白黒させている星くんに声がかかります。
声をかけたのは営業課の小口さんです。
「…は、はーい!今、行きます。
み、岬さん、それ配布までにちゃんと消しといてよ…!!」
汗だくになりながら、星くんは小口さんのところへ向かいます。
「ちぇっ」
定型文のサンプルを削除しながら、岬さんがフンと鼻を鳴らしました。