オーグチさん、どこいってたのよ
事務所に戻ってきたオーグチさんのもとに、泉先輩が駆け寄ります。
「あーいたいた。どこいってたのよ。
リスト入力の補助機能が完成したから、見せようと思ったのに」
「え、マジ？もーできたんだ、スゴイじゃん。
……っとその前に、岩田さんと打ち合わせたいことがあるんだ。
……部長、部長っと」
オーグチさんがキョロキョロと、辺りを見渡します。
「いたいた。悪いけど確認するのは後な。
……岩田さん～～」
大きな声で岩田部長を呼び止めると、オーグチさんは小走りに駆けていきます。
泉先輩は腰に手を当てて、頬を膨らませながらその後ろ姿を見つめます。
「岩田さん。少し、お時間もらえますか？」
小声で二言三言、言葉を交わすと、二人は事務所を出て会議室に入っていきました。
「はあ！？全員で飲み会？
学生のコンパじゃないんだぞ…、アホか！！」
岩田部長は舌打ちをしながら、苦々しそうにつぶやきます。
「さすがに、入ったばかりの森川や、岬さんは不要でしょうね」
「フン。泉くんを加えればご満悦なんだろう？
同期の中では、一番仲が良かったみたいだしな…。
若（バカ）の世話と尻拭いで、苦労したみたいだぞ……泉くん」
「ブッ！その話、今度くわしく教えてくださいよ。
…じゃあ、若には岩田さんと俺、星と泉さんが参加すると伝えておきますよ」
「それはいいが…何を話すのか、もう考えてあるのか？」
オーグチさんは、キョトンとした顔で岩田部長を見つめます。
「やだなあ…、それを今から作戦会議するんですよ。
岩田さんと、ここで！」
彼は背筋をピンと正すと、ネクタイをキュッキュッと締め直しました。
