どんな形ならやりやすいんですか?
「え?……社内で知らない人、いないんじゃない?
僕は江口さんから、詳しく教えてもらったけど?」
「(あいつ……)」
星くんの脳裏に、言いふらしまわってる江口さんの姿が浮かびました。
「岩田さん。
先ほどのお話で、業務部内の改善活動という枠内では、
全社的な動きがとりにくいとおっしゃってましたが…、
どのような形ならやりやすいんですか?」
岩田部長はチョット考えるような仕草をしてから、言いました。
「そうですな……、
例えばシステム企画室のような独立した部署があれば、
組織の垣根を越えた全社的な動きがとりやすいかと…」
「システム企画室……ですか。
今ある電算室とは違うんですか?」
「システムの企画と開発を中心に行う部署です。
業務部でやっているように、まずは全社でシステム化の要望を集めます。
その中から改善効果の高いものをピックアップし、必要度に応じて優先順位をつけます。
後は優先順位の高いものから、順次開発を行っていきます」
「なるほど」
「開発したシステムには、メンテナンスが不可欠です。
それも、システム企画室のほうで行います。
さらに、似たような業務を行っている部署に対して水平展開を行うなど、
要望の有無にかかわらず、こちらから積極的にシステムを企画、提案していきます」
若は目の前のジョッキに視線を移し、フーッとため息をつきました。
「…本来であれば、それらは電算室が行うべき仕事です。
ですがご存知の通り、電算室にはそれだけのスキルも余力もありません。
今あるCOBOLのシステムをお守りするだけで、手いっぱいです。
……岩田さん、VBAでそんなことが本当に可能なんですか?」
岩田部長は若をまっすぐに見つめ、きっぱりと言いました。
「ここ一、二年の、星たちの仕事っぷりを見れば、十分可能だと思います」