ちょっと会議室に来てくれ
「もう!遅いわね…いつまで待たせんのよ」 泉先輩は事務所の入り口をチラチラと見ながら、そうつぶやきました。
「おーい。泉さん、星。
ちょっと会議室に来てくれ~」
オーグチさんが事務所の入り口から顔を出すと、二人を手招きします。
星くんと泉先輩はキョトンと顔を見合わせると、席から立ち上がりました。
「…失礼しま~す」
会議室のドアを開け、二人が揃って入室します。
「おお、来たか…まあ、座れ。手短に話すぞ。
今週金曜の夜に、若……取締役と業務改善部隊の今後について座談会を開く。
場所は駅前の居酒屋だ。
二人とも、その日はスケジュールを空けておいてくれ」
「ぶっ…!金曜の夜って、明後日じゃない。
なんで、こんな間近になって連絡するの!?」
泉先輩が面食らったような顔で声を上げます。
「決まったのが、ついさっきなんだ。
なんだ?二人とも、何か予定でも入ってるのか?」
岩田部長が二人の顔を交互に眺めます。
「えっと…、金曜の夜は…」
星くんがモジモジしながらつぶやきます。
「金曜は、例の勉強会の日なんだろ?
悪いが今回は、こちらを優先してくれないか。
業務改善部隊の、いやVBA開発全体の将来に関わる重要な打ち合わせになる。
ぜひ、二人とも出席してくれ」
星くんと泉先輩は顔を見合わせると、やれやれといった感じでうなずきあいます。
「……わかりました、こちらを優先します。
でも、若とご一緒していいんですか?
俺みたいなペーペーが?」
星くんが心配そうな顔で、岩田部長に尋ねます。
「おまえは業務改善部隊のリーダーだろう?
それにもう、ペーペーでもない。
…もっと、そのあたりを自覚しろ。
……オーグチくん、足はどうする?」
「ウチの若いのに、車で送らせますよ。
駅前だから、帰りは電車で問題ないでしょう。
……俺、今から早速、若に伝えてきますよ」
オーグチさんはそう答えると、急ぎ足で会議室から出ていきました。
「…というわけだ。では当日、よろしく頼む」