定時になったら…
「(そう言えば今日は、勉強会の日じゃないか…。
森川くん、どうしよう?
…とりあえず声はかけるとして……参加は強制できないしな…。
彼、来てくれるかな…?)」
星くんは不安げな面持ちで、岬さんと森川くんのやりとりを遠目に眺めます。
「(定時になったら話してみるか…)」
心の中でそうつぶやくと、視線を再びモニターに戻しました。
「4章の"VBAの構文"は、わからないところとか特になかった?」
森川くんは、口元に手を当てて少し考えます。
「4章ですか?……特にないですが、オブジェクトの解説は面白かったっスね」
「あらそう?どのあたりが面白かったの?」
「操作の対象となるオブジェクトを明示的に指定しなかったとき、
アクティブなオブジェクトが操作の対象になるんですよね。
かっちりとした言語では、こういった省略が許されないことが多いですから…」
岬さんは、テキストをパラパラとめくります。
「ああ。"オブジェクトの階層構造"のところね。…はいはい。
VBAには省略できる記述が、い~っぱいあるんだわ」