どう報告したもんか…
「(…さて、岩田さんにどう報告したもんか…)」
				腕を組みながらオーグチさんが、資料室へ続く長い廊下をトボトボ歩いていると、
				窓越しに社長の姿が目に入りました。
				「(珍しいな、社長が立ち話をしているぞ…)」
				廊下の突き当りの角で身を隠しながら、こっそり先をうかがいます。
				総務部長の梶田さんと社長が、井戸端会議をしていました。
				「…しかし困ったもんだと思ってるんですよ。
				業務部の連中がコソコソやって…………。
				勝手にシステムを作られても、こっちには一言の相談も無いですし…」
				「(俺たちの話か…!)」
				オーグチさんは壁にピタリと身を寄せて、聞き耳をたてました。
				「…こういったことが続くと、会社としていかがなものでしょう。
				このまま放置して………なことにならないかと…………」
				「…しかし、電算室がカバーできない細かい業務の効率化は……………………。
				やはり実際に作業をやっている人間でないと、わからない部分が…………」
				オーグチさんは必死に耳をそばだてますが、どうも途切れ途切れにしか聞こえません。
				梶田さんは、背を向けているので表情までわかりませんが、あきらかに不機嫌な様子です。
				「まあ、会社のコンピュータを管理してるのは電算室ですし、
				勝手にVBAで業務システムを作るなんて使い方を、こちらとしては許可した覚えなんてないわけですよ。
				今後のことを考えると、いずれ………………なくちゃならんと思っております」
				梶田さんが社長に一礼すると、スタスタと歩き去ります。
				社長もゆっくりとこちらに向かって歩き出しました。
				「(いけね…!)」
				オーグチさんはきびすを返すと、今来た廊下を早足で戻り始めました。
				「(ふざっけんな…!仕事を効率化するのに業務部も総務部もあるか……!!
				俺たちは……、俺たちの会社のためにコレをやってんだぞ……!!)」
				
				彼の握りしめたこぶしの中で、手のひらに爪が喰い込みます。































