参加しないかい?
「…勉強会……っスか?」
定時のチャイムが鳴り響く中、森川くんが怪訝そうな表情で星くんを見つめます。
「うん。金曜日の退勤後、俺の友人で八木というやつのマンションに集まって、
VBAの勉強会をやってるんだ。
業務じゃないから残業代は出ないけど、自己啓発の勉強会ってことで……
森川くんも参加しないかい?」
森川くんは、星くんの後ろに立っている泉先輩と岬さんの顔を交互に眺めます。
岬さんは、彼と視線を合わせないように、不自然な表情で横を向いています。
「…勉強会って、ここにいるメンバーでですか?」
「そう。俺と先輩に岬さん、八木。
あと森川くんも含めると、5人になるかな?」
「八木っち、スゴイのよ。VBAの達人なの!」
泉先輩が、横から口を挟みます。
「はあ…VBAの達人……っスか…?」
森川くんは、さらに怪訝そうな表情をします。
泉先輩のとなりで岬さんは、モジモジと落ち着かない様子で体を動かしています。
彼はしばらく黙り込んだ後、おもむろに口を開きました。
「…いや、やっぱりイイっス。
業務時間外まで、拘束されるのはちょっと…。
残業代も出ないって話ですし…」
森川くんはかぶりを振ると、そそくさと帰り支度を始めます。
「そ、そうかい。…気が変わったらいつでも、参加してくれていいんだよ」
未練たらしくそう伝える星くんの背後で、岬さんはホッとした顔で胸をなでおろすのでした。