部長がおかんむりだわよ！
「星くーん！
もう車出すから早く来いって、部長がおかんむりだわよ！
何してんのよ」
「すみませーーん、すぐ行きまーす。
じゃ、よろしく頼んだよ」
星くんはそう言うと、ダッシュで事務所を後にします。
「（八木には悪いけど、勉強会が中止になってホッとしたよ……
こないだの土曜の件もあるし、なんか顔…合わせづらいもんな）」
正面玄関に続く階段を降りながら、星くんは心のなかでつぶやきます。
彼を乗せると、社用車のワゴンは、駅前に向けて走り出しました。
「今日は皆さん、よろしくお願いします。
ぜひ、忌憚のないご意見をお聞かせくださいね」
助手席に座った若が、後ろを振り返りながら挨拶します。
「こちらこそ、よろしくお願いします。
今日は、部内で進めている"VBAによる業務改善"の話題が中心になりますが、
それでよろしかったですかな？」
運転席の後ろに座った岩田部長が、そう返します。
「はい、もちろんです。
…泉さんも、業務改善部隊で活躍のご様子。
今日はとても楽しみです」
若が泉先輩に向かって、ニッコリと笑いかけます。
「どうも、ご無沙汰しています。
一緒にお仕事したのは、もう何年前のことかしらね？
ついこないだのように感じるけど……
ホント、いろいろとお懐かしいわ～～」
泉先輩が軽めのジャブで牽制すると、若はシドロモドロになります。
彼女の隣りで星くんは、以前聞かされた若の武勇伝を思い出し、
吹き出したいのを懸命にこらえていました。
