ご結婚はなさらないのですか?
「…それはそうと、泉さん。
まだ…、ご結婚はなさらないのですか?」
「(おいおい。セクハラかよ……)」
オーグチさんと星くんが、心のなかで同時にツッコミを入れます。
「はい。まだ、予定は入っておりません。
なかなか、よい機会に恵まれないもので……」
「そんなあ…。泉さんなら、その気になれば……」
若が手元のジョッキをグッと飲み干します。
「今度我が社でも、外国人の技能実習生の受け入れを検討してるんですよ。
……よかったら来月、現地の視察ツアーにご一緒しませんか?
ハノイやホーチミンの観光もありますよ?」
「(おいおい。今度はパワハラかよ……)」
オーグチさんと星くんは、再び心のなかでツッコミを入れました。
「(システム開発には予算を割かないくせに、そういったことにはご熱心なもんだ……
やれやれ、やはり彼と飲むのは時間の無駄だったか…)」
岩田部長はため息をつきながら、日本酒をチビリチビリとやります。
「あら、ステキなお話ね。
でも、どうしようかしら……」
「(…え……先輩……まさか!??)」 泉先輩がそう答えるのを聞いて、冷たい汗が背中に滲むのを星くんは感じました。