こんな時間にめずらしいな
「いい天気だなあ…。
昨日は、めっちゃ飲んだなあ…」
ガランとした吹き抜けを、星くんはトボトボと歩いています。
薄暗い壁に、大きな立て看板が無造作に立てかけられています。
「そうか…昨日は学園祭の打ち上げか。
それで、下宿の連中は帰郷して誰もいないんだな。
…サークル棟にでも、行ってみるか」
星くんは辺りをキョロキョロと見回します。
ここは星くんの通った大学の、学生会館二階の大広間です。
強烈な陽の光が差し込むバルコニー開口部に、見慣れた人物が立っていました。
「よう、星。こんな時間にめずらしいな。
講義の方は、いいのかい?」
「八木じゃないか。
おまえこそ、こんなとこで何やってんだい?」
八木くんは、バルコニーの手摺にもたれかかりながら、学内の風景を一望しています。
遠くのグラウンドから、野球部の歓声が聞こえてきました。
「先週の話、考えてくれたかい?」
「先週の話って?」
八木くんが、やれやれといった感じで腕を広げ、ため息をつきました。
「おいおい、もう忘れたのかい?
俺と一緒にベンチャーをやらないか…って話だよ。
ネットショップの売上も目標額に達したし、そろそろ俺も自分の夢を追いかけないとな」
「…いや、もちろん忘れてないよ」
星くんは八木くんの隣に立つと、並んで手摺にもたれかかりました。
「…以前話した俺の夢、覚えてるよな?
…VBAを使って世界のビジネススタイルを変革したいって話。
…VBAのもつポテンシャルを最大限に活用し、すべての企業の業務改善と効率化を実現させる……
それが、俺の夢だって」
「うん。もちろん覚えてるよ」