会議室からの帰り道
「もう、部長ったら!ホント強引なんだから…。
まあタダ酒飲めるから、ヨシとするか」
「取締役と飲むなんて…。
なんか俺、胃が痛くなってきました…」
会議室からの帰り道、二人は事務所へと続く長い廊下を歩いています。
「な~に、緊張してんのよ。
あたし同期だったけど、そりゃもう最初はひどいもんだったわよ?
みんな影で、若じゃなくバカって呼んでたし。
…業務報告書に、"時間がなくて困るよ~ん"とか、"改善が期待できるぜベイビー"とか、
平気で書いてくるのよアイツ。
あたしが後から、どれだけ修正したか…」
「ブッ…!!マジっすか、それ」
「…他にも、ミリとセンチを間違えて図面書くわ、機械の操作ミスって金型ぶっ壊しそうになるわ、
プライベートメールを社内一斉送信するわ…と、失敗談をあげればキリがないわよ。
とにかく社長の息子だからって、そんな緊張することないわよ」
泉先輩が星くんの肩を、パシーンと叩きます。
「いてて……ありがとうございます」 星くんは、ニコリと笑いながら事務所のドアを開けました。