金曜日はお疲れ様でした
フンフンと鼻歌を歌いながら、オーグチさんが資料室へと続く、長い廊下を歩いています。
前方からゆっくりとした足取りで、若がこちらに向かってきました。
「お、若!…じゃない取締役!おはようございます。
金曜日はありがとうございました」
「オーグチさん……おはようございます。
金曜日はお疲れ様でした」
若の口調に元気がありません。
心なしか表情も沈んでいるみたいです。
「どうかされました?
……ひょっとして、まだ酒が残ってますか?」
「いえ。体調は問題ありません。
……金曜の件なんですが、昨日、おとといと早速、社長と話し合ってみたんですが…。
その、なんというか……」
苦笑いを浮かべながら、若が申し訳無さそうな顔でオーグチさんを見つめます。
「よい感触ではなかったんですか?」
「ええ。…ここではアレなので…」
若は小声でそう言うと、近くにある会議室を指さします。
二人はそそくさと、会議室の中へ入っていきました。
「………ふん」
廊下のつきあたりにある資料室のドアをわずかに開け、
険しい顔つきで二人を凝視する人物がいます。
総務部長の梶田さんです。