17時の会議室
時計の針が17時を指し、定時のチャイムが鳴り響きます。
会議室では米谷顧問と岩田部長が、梶田部長の訪れを今や遅しと待ちかねていました。
「遅くなりました」
ドアを開け、梶田部長が顔を出します。
「さすが総務部長、時間ピッタリじゃ」
「…お忙しいところ、お時間をいただき恐縮です。
どうぞ、おかけください」
岩田部長が席を立ち、梶田部長を招き入れます。
訝しげな表情をありありと浮かべながら、梶田部長は会議室の奥の席に腰を下ろしました。
「本日お呼び立てしたのは他でもない、昨今、業務部で行われているVBAの開発について、
ぜひ総務部と、認識をともにしたいと思いまして…」
「ふん、認識をともに……ね…」
梶田部長は、木で鼻をくくったようにつぶやきました。
ちょうどその頃、事務所では星くんと泉先輩が、残業の真っ最中です。
「…先輩、最近感じるんですけど……。
開発案件、やたらと増えてません?」
「あーー。それなら、あんたの感じるとおりよ」
泉先輩はエクスプローラーで過去のフォルダを探り、半年前の予定表を表示させました。
「ほら。今と比べて半分くらいでしょ?
たった6ヶ月で、VBA化を希望する案件が倍近くになってる。
忙しいはずよ」
「ホントだ……以前の倍はありますね。
こりゃ、忙しいはずだ…」
泉先輩はフンと鼻を鳴らします。
「……ま、他部署の残業は減ってるみたいだし、私たちの残業が増えても、
全社的に経費削減になるなら……いーんじゃないの?」
「はあ……まあ、そうですね…」