電算室の重要性
星くんは、暗い顔をしてうつむきます。
「(ホントに、このままでいいんだろうか…?
部長に相談すべきじゃないのかな……)」
彼はキーボードを打つ手を止め、小さなため息をつきました。
「VBAによる開発を促進することで、ますます電算室の重要性が増すというのが、私の見解です」
「ほう。それは、いったい?」
梶田部長は身を乗り出しながら、問いただします。
話し合いは、佳境を迎えつつありました。
「基幹システムで蓄積した業務データは、会社の宝そのものです。
ただCOBOLでは、それを有効活用するには費用対効果が悪すぎる……。
代わりに安価なVBAで開発を行えば、高いコストパフォーマンスで、
システムをタイムリーに提供できる……というわけです」
「なるほど…メーカーが直販するより、ノウハウのある代理店が販売するほうが効率がいい……
というのに似てますな」
岩田部長が大きく首を縦に振ります。
「おっしゃるとおりです。
電算室は、会社の要である基幹システムとハードウェアをしっかりと保守していただき、
スポット的な開発は、システム企画室に一任していただく。
両者は敵対するものではなく、互恵的なパートナーの関係です」
梶田部長は手をあごに添え、しばらく何かを考えていましたが、
「岩田さん。
どうやら私は…あなたのことを誤解していたようだ…」
そう言うと、岩田部長に向かって手を差し出しました。
「…我々が手を携えることが会社のためになるのなら、一も二もありません。
電算室は全面的に、システム企画室を応援しますよ」
岩田部長は微笑みながら、差し出された手をがっしりと握ります。
背後から二人を見つめていた米谷顧問は、小さな目をさらに細め、ウンウンとうなずくのでした。