久しぶりの喫茶アゲイン
定時が過ぎました。そそくさと会社を後にした星くんは、
駅前の喫茶アゲインで八木くんとコーヒーを飲んでいます。
「こ、これって。八木…」
八木くんから差し出された名刺には、"オフィス・ヤギ 代表 八木秀樹"の文字が印刷されていました。
「うん。ここ数週間、勉強会を休みにしてもらってる間に、個人事業の開業届を出してきたんだよ」
「べ、ベンチャー企業ってやつかい…?」
名刺を持つ、星くんの手が震えます。
「いやいや、法人設立はハードルが高かったんで、今回は断念したんだ。
あくまで、個人事業主としての開業だよ。
……真っ先に、お前に知らせておきたかったんだ」
八木くんが、静かにコーヒーを口に運びます。
「ついに、夢をかなえたんだな。
おめでとう、八木!」
「"かなえたん"じゃなくて、これから"かなえるん"だけどね。
ありがとう、星」
そう言うと、八木くんは満面の笑みを浮かべました。