金曜日の夜は、明後日の夜
「おーい。泉さん、星。
ちょっと会議室に来てくれ~」
オーグチさんが事務所の入り口から、二人を手招きします。
「ぶっ…!金曜の夜って、明後日じゃない。
なんで、こんな間近になって連絡するの!?」
会議室に、泉先輩の声がこだまします。
「決まったのが、ついさっきなんだ。
なんだ?二人とも、何か予定でも入ってるのか?」
「えっと…、金曜の夜は…」
星くんがモジモジしながらつぶやきます。
「…今回は、こちらを優先してくれないか。
業務改善部隊の、いやVBA開発全体の将来に関わる重要な打ち合わせになる。
ぜひ、二人とも出席してくれ」
釈然としない顔で会議室から出てきた二人は、事務所へと続く長い廊下を引き返します。
「取締役と飲むなんて…。
なんか俺、胃が痛くなってきました…」
「な~に、緊張してんのよ!!」
泉先輩は以前、同じ部署にいたときの、若の失敗談を並べ立てます。
彼女は思い出している内に、だんだんと腹が立ってきました。
「……とにかく社長の息子だからって、そんな緊張することないわよ!」
泉先輩が星くんの肩を、パシーンと叩きます。
「いてて……ありがとうございます」
二人は笑いながら、事務所の中に入っていきました。