いいところに目をつけたわね
星くんがいなくなると、事務所の中が急にガランとします。
森川くんが辺りを見渡すと、残っているのは彼と岬さんの2人だけでした。
「(残業してるの、俺と先輩の二人だけじゃん。
…こ、これって、チャンスなのでは……!?)」
にわかに、森川くんの胸がドキドキと波打ちます。
「こ、このApplication.Callerの"Application"って、一体なんなんです?」
彼は平静を装いながら、コードについて尋ねました。
「いいところに目をつけたわね。
それはApplicationオブジェクトと言って、VBAを実行しているアプリケーションを参照しているの。
ここではExcel VBAだから、Applicationオブジェクトは、実行しているExcelそのものよ」
岬さんが森川くんに、Applicationオブジェクトの説明を始めました。
ちょうどその頃、駅前の居酒屋スエ吉の前に、星くんたちを載せたワゴン車が止まります。
「どうぞ、どうぞ。オグチで、予約を入れてますから。
ヤマシター、ご苦労さん。気をつけて帰ってくれ」
車は、駅のロータリーを回ると、会社の方へ引き返していきました。