飲み会のスタート
「かんぱい……」
星くんは、小声で乾杯をつぶやくと、目の前の枝豆を黙々と食べ始めました。
「今日は、ありがとうございます。
小口の方からあらましはお伝えしてると思いますが、
業務部ではVBAというプログラミング言語を使用した業務改善システム、アプリの開発に注力しています。
今後の社内での方向性について…」
岩田部長が早々に、本題について切り出すと、
「まあまあまあまあ岩田さん、かたい話は置いといて…とりあえず飲みましょーよ~~~」
すでにジョッキを空けたオーグチさんが、若と岩田部長の間に割って入ります。
「(…豪快舟盛り、もう1つ頼んだほうがいいかしら?)」
テーブルの上に次々と運ばれてくる料理を見つめながら、
泉さんは人数と料理のバランスをチェックしています。
「(役員の前だ、絶対に酒の失敗はやらないぞ…)」
黙々と枝豆を食べ続ける星くんが、心の中で誓います。
彼は学生時代、サークルのコンパで泥酔し、粗相をして周りに迷惑をかけた黒歴史を思い出しています。
「(オーグチのやつ、あきれたな…。これじゃあ、ただの飲み会だ…)」
運ばれてきた2杯目の生中を、ごくごくと美味しそうにあおるオーグチさんを眺めながら、
岩田部長は思わず苦笑しました。