森川くんの初出勤
「社員証に名刺、就業規則の冊子は、大切に保管してください。
健康保険の被保険者証発行には、少し時間がかかります。
来週くらいが目安かな…」
書類を束ねながら、梶田部長が森川くんにそう告げます。
「わかりました。ありがとうございます」
「森川くんの配属先は、業務部の業務課か。
…場所がわからないだろうから、そこまで一緒に行こうか」
梶田部長が席を立つと、森川くんも慌てて立ち上がります。
今日は、彼の入社初日です。
「業務課というのは、どんなことをする部署なんですか?」
資料室から続く、長い廊下を歩きながら、森川くんが尋ねます。
「業務に必要となる様々な資料を作成したり、受注から手配、製造から出荷までを管理したり…、
まあ業務全般を行うところだよ。
…あ、あと、君の得意なコンピュータも扱うかな」
二人が事務所の前まで行ったとき、通りかかった岩田部長と鉢合わせをします。
「ちょうどよかった、岩田さん。
新入社員の森川くんです。
…じゃあ後は、よろしくお願いしますよ」
岩田部長に森川くんを引き渡すと、梶田部長は踵を返して去っていきました。
「君が森川くんか。
部長の岩田だ、今日からよろしくな。
……皆に紹介しよう」
そう言うと、岩田部長はドアを開けて森川くんと事務所に入ります。