俺もう、頭にきちゃって…
会社から少し離れた喫茶店で、岩田部長とオーグチさんがランチをとっています。
ここにはめったに、会社の人はやって来ません。
「…と、いうわけなんですよ。俺もう、頭にきちゃって…」
エビフライ定食のエビを頬張りながら、オーグチさんは岩田部長に、
若による社長への説得が失敗したことや、業務部がVBAで勝手なことをしていると、
梶田部長が社長に告げ口していたことを話します。
「…こういった問題は、そこら中の会社で多かれ少なかれ存在するんだろう」
岩田部長は食後のコーヒーを味わいながら、そう切り出します。
「オフコンの時代にもコンピュータに詳しい社員が、
こっそりプログラムを作って使うなんてことは、たまにあった。
……パソコンの時代になってコンピュータの利用法が多様化し、
電算室ではもはや、社員がPCで何をやっていて、どう利用してるのか、把握しきれないんだろう。
そんな中、VBAで勝手にシステム開発をする連中がいれば、面白くないのは当然だろうな」
「でも、岩田さん。俺たち、会社のためにやってんですよ。ブイビーエーの業務改善」
「…まあ、あれだ。伝家の宝刀を抜くときがきた……ということだ。君には教えてなかったか?
……会社で無理を通すときは、"根回し"というものが、必要だということを…」
岩田部長は伝票を手に立ち上がります。
二人は、喫茶店を後にしました。