みんなの仕事を楽にする
いよいよ飲み会も、佳境に差し掛かってきました。
「……でも岩田さん?
システム企画室をつくって社内のほとんどの業務をVBA化したら、その後はどうなるんです?
システム企画室のやることが、なくなってしまうんじゃないですか?」
若がいたずらっぽい顔をしながら、岩田部長に尋ねます。
「…そのときは、他社のシステムを受注開発すればいいでしょう。
似たような業務形態の製造業は、ゴマンとあります。
我が社での成功事例が、最も説得力のあるモデルケースになるはずです。
……その際の営業はぜひ、私にやらせていただきたい」
若があんぐりと口を開け、岩田部長を見つめています。
その隣でオーグチさんも、同じように口をあんぐりと開けていました。
「(マジか…岩田さん。
そんなことまで、考えてたなんて…。
手っ取り早く、社内に自分の城を持つ手段としてブイビーエーに参画したけど…、
ひょっとしてとんでもないことに首を突っ込んだんじゃ…)」
オーグチさんの額に、薄っすらと汗が滲みます。
「(も~~~!!
…VBAの話はいいから、みんなもっと食べなさいよね!
こんなに残しちゃって、もったいないじゃない!!)」
VBAの話ばかりで、いっこうに箸の進まない面々を見ながら、泉先輩の表情が険しくなっていきます。
「(ど、ど、ど、どうなってんだ一体!?
今日は、これからのVBA開発に関する、技術的な打ち合わせをするんじゃなかったのか??)」
システム企画室や他社システムの開発など、星くんが想像もしなかった話題が飛び出して、
彼は目を白黒させています。
「(VBAは、みんなの仕事を楽にするものだろ…?
違うのか……??)」
星くんにとってのVBAは、あくまで業務を効率化するための便利なツールでした。