「よう、"営業進捗管理一覧ブック"の検索機能、完成したんだって?
俺にも見せてくれよ」
オーグチさんと入れ替わりで入ってきたヤマシタさんが、森川くんに声をかけます。
「もおーー知ってるの?早いわね」
ヤマシタさんを横目に、泉さんが返します。
「そこで、オーグチさんに聞いたんだよ。すごくイイ感じだって!
…森川、お前がんばってたもんなあ!」
「いや……そんな。
ヤマシタさんに、そう言ってもらえて嬉しいっス」
「星。森川はガッツのあるやつだ。
……これからも、よく見てやるんだぞ」
ヤマシタさんが星くんの肩に手をおいて、そう言います。
星くんは昔、岩田部長に言われた言葉を思い出しました。
「(みな、お前が考える以上に、お前のことをきちんと見ている、
そういえば部長も、そんなことを言ってたっけ)
……まかせておいてください、ヤマシタさん」
星くんは胸を張って、そう答えました。
それから数年経ちました。
かつての業務改善部隊は、IT推進室へと変革を遂げ、
今では、これまでに開発したVBAプログラムをライブラリ化し、同業他社に向けて販売しています。
「星課長。オフィス・ヤギの八木さんから、お電話です」
森川くんの元気のいい声が、事務所に響きます。
彼は、VBAエキスパートのベーシックとスタンダードに合格し、
現在は主任として星課長のもと、IT推進室の大黒柱を担っています。
「森川くん。手が空いたら、打ち合わせしたいんだけど…いい?」
岬さんが、森川くんに声をかけます。
彼女は現在、IT推進室内のIT教育係の係長をしています。
「あ、今からでもいいですよ」
森川くんがノートパソコンを持って、ミーティングスペースの方に移動します。
「来月の新人向け、VBA研修なんだけど……、
テキストの他に実際の業務マクロを紹介しようと思ってるの。
いくつか、リストアップしてくれないかな」
岬さんも、自分のノートパソコンを抱えて席に座ります。