「承知しました。
新人向けだから、コードがシンプルで、動作がわかりやすいヤツがいいですよね」
森川くんは目ぼしい業務マクロを、いくつかリストアップして岬さんに見せます。
「ふんふん、なるほど……いい感じじゃない」
岬さんは、リストを上から確認していきます。
順々に目で追っていくと、リストの一番下に、
『岬先輩。今度の日曜日、僕の家で一緒にVBAの勉強をしませんか?』
…と書かれた、文が差し込まれていました。
「…バカ。何、書いてんのよ。
……次の日曜日ね。いいわよ」
岬さんが頬を赤くしながら、うなずきます。
森川くんは、小さくガッツポーズをとりました。
森川くんのVBA日記に、今、新しい1ページが刻まれようとしています。
-完-
これで、コラム「やってみよう!Excel VBAで業務改善!」の、すべての物語が終了しました。これまでご愛読くださった皆さまに、心よりお礼を申し上げます。
今から30年前、私は地方のとある製造業の社内SEをしていました。ちょうど、星くんと同じ立場です。その当時からシステムによる業務改善の必要性を、多くの企業が認識していました。私がVBAに出会ったのもその頃です。Excelのバージョンは5でした。
その後、本職のSEとしてSI企業に転職、MVPになってからはフリーランスとして、多くの会社のシステム開発に携わってきましたが、企業をとりまく状況は30年前とさほど変わってないようです。
私は「なぜ」、システムによる業務改善がうまく行かないのか、これまで色々と考えを巡らしてきました。そして得た結論を記したのが、本コラムです。
業務改善には、3つの人材が必要です。
1つ目は、星くん、森川くんのように、システム開発が行える人材
2つ目は、オーグチさんのように、業務改善のアイデアが出せる人材
3つ目は、岩田部長のように、開発者と会社の間に入り、調整が行える人材
私が30年前に業務改善にチャレンジしたときは、3の人材が不在でした。そのため様々な横やりが入り、道半ばで頓挫したという苦い思い出があります。
業務改善はボランティアでも自己啓発でもありません。れっきとした「業務」です。通常業務をこなしながら片手間にVBAを…などという甘い考えの会社が、業務改善を成し遂げられるはずがないのです。
そのことを本コラムで、それなりに表現できたのではないかと思っています。30年来の宿題を、やり終えた気分です。本当に、ありがとうございました。
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