そのころ会社では水木さんが、資料を探しに資料室へと続く長い廊下を歩いています。
「………だから、まだ早いでしょ」
「そうですか?じゃあ、いつ話します?」
水木さんが資料室のドアノブに手をかけようとしたとき、中からヒソヒソ声が聞こえてきました。
「あら?中に、誰かいるのかしら?」
ドアを開けると、泉先輩と星くんが、何やら真剣に話をしています。
「あら、イズミンに星くん。
……お邪魔だったかしら?」
「わ!……ミズっちか。別に。
あたしたち、もうおいとまするから、ごゆっくり。
行きましょ、星くん」
そう言うと、泉先輩と星くんは、そそくさと資料室から出ていきます。
その後姿を見つめながら、水木さんは小首をかしげました。
「なあ~にかしらね?……あやしいなあ」
彼女はニヤリと笑いながら、そうつぶやきました。