「まいっちゃったな…水木さんには」
まだ少しむせながら、星くんは資料室前の長い廊下へと差し掛かりました。
手前のドアが開き、現れた社長と鉢合わせをします。
「おお、キミか。
……もう昼は食べたか?」
「は、はい、社長!
今、食堂で食べてきたところです」
「そうか……なら少し、社長室で休んでいかないか?
コーヒーを持ってこさせよう」
「(えええええ~~~~!?)」
社長は、出てきたばかりの社長室を指差します。
星くんは、目を白黒させました。
「…ああ、社長室に……コーヒーを2つ、
あと岩田くんに、星主任は社長室にいると伝えておいてくれ……」
社長が内線をかけている間、星くんは革張りのフカフカなソファーに、
居心地悪そうに腰掛けています。
「この間は、アレと一緒に飲んだそうだな。
料理とか、十分足りていたかね?」
星くんは一瞬キョトンとした顔をしますが、すぐに先日の、
若との飲み会のことを言っているのだと気づきました。
「…は、はい。取締役には、大変ごちそうになりました。
他のメンバーも、とても喜んでおりました」
「そうか、そうか。
それはよかった……」
社長は目を細めながら、満足気にうなずきます。
その頃事務所では、泉先輩と岬さんが立ち話をしています。
「…総務から連絡があって、星くん社長室にいるんだって。
午後のミーティング、ズラさなきゃね」
「…そうですね。他の作業を進めておきます。
……それにしても星さん、一体何の話なんでしょうね?」