「"VB"でできることなら、あらかたできちゃうんだぜ!」
八木くんはドンと胸を叩きながら、力強くそう答えました。
「VBAでそんな事ができるとは、思ってもみなかったよ…。
その場合、マクロブックとデーターベースの関係は、どうなるんだい?」
星くんが質問すると、八木くんが紙にイメージ図を描きました。
「こんな感じになるね。
データベースファイルは、ネットワーク上の共有フォルダーに設置する。
マクロブックは各ユーザーに配布してもいいし、
共有フォルダーに置いといて、ダウンロードしてもらってもいい」
「なるほど…。
これなら、データはあくまでAccessのデータベースファイルにあって、
各ユーザーのマクロブックは、Webブラウザのように
データを表示、操作するだけのツールになるんだね。
うまいやり方だなあ…」
「まあ、一般的なクライアントサーバーシステムなんだけどね、
開発環境がExcel VBAってだけで……。
あと個人のデータはレジストリに保存させて、マクロブック内には
一切データを持たないようにする。
そうすれば更新作業も、ブックの入れ替えだけで済むだろ」
「…これって、どのくらいでできそうだい?」
八木くんは口元に手を当てながら、しばし考えます。
「これだけのシステムになると、一朝一夕ってわけにはいかないなあ。
テーブルの設計を含めて、それなりの日数が必要だよ」
「わかった。
とりあえず八木は、このシステムの開発に専念してくれ。
必要であれば、岬さんか森川くんを、アシストにつけるから」
「森川……?
ああ、岬さんが面倒をみてる新入社員だったっけ。
……彼の実力がどんなもんか、ちょっと興味があるな」
そう言うと、八木くんは不敵な笑みを浮かべました。