翌日の朝になりました。
星くんとオーグチさんを乗せた社用車は、駅に向かってひた走っています。
「悪いな星、運転手に使っちゃって」
「いえいえ。駐車代もバカにならないので、気軽に言ってください。
帰りは直帰で、迎えはいらないんですよね?」
「ああ、そうだよ。
……そういえば水木さん、ブイビーエーの方はどうだった?」
助手席のオーグチさんが、景色を眺めながら尋ねます。
「いい感触だったみたいですよ。
岬さんのこと褒めてました、教え方がうまいって。
…………ところで、あの……」
「どした?何か気になることでもあるのか?」
星くんはハンドルを握る手に力を込めると、意を決して切り出しました。
「泉先輩と水木さん、同期なんですよね?
……なんで先輩、水木さんのこと毛嫌いしてるんですかね?」
「……ああ。
毛嫌いじゃなくて、頭が上がらないんだよ。
例の一件があったから」
「例の一件…って、なんです?」
オーグチさんはおもむろに、星くんの方へ顔を向けました。
「そうか、星は知らないんだな。
彼女たちが入社一年目の、社員旅行の話だもんな…」
「社員旅行で、なにかあったんですか?」