そろそろ車の準備を…
「うふふ。
あまり見た目にこだわり過ぎると、メンテナンスがしにくくなって本末転倒になるわ。
使いやすさを優先すればオッケーよ。
…美的センスとマクロの能力は、全く別のものだもん」
岬さんがニッコリ笑いながら、そう言います。
「ヤマシター、悪いけどそろそろ車の準備をしてくれ。
…あっと、帰りは全員電車だから、会社に戻ったらそのまま帰って大丈夫だよ」
「ウイっす。
運転手を除いて、5人ですね?
……白のワゴンがいいな」
オーグチさんから車の運転を頼まれた社員は、壁に掛けられた社用車の鍵の中から
ワゴンの鍵を手にすると、足早に事務所を出ていきます。
「岩田さん、そろそろ準備の方をお願いします」
オーグチさんは、事務所奥の岩田部長に向かって声掛けをします。
岩田部長は、通勤カバンを机の下から持ち上げると、
「ワシか?
……ワシならいつでもオッケーだぞ」
ニヤリと笑いながら、そう答えました。