残業してもう少し勉強する?
「ね?
呼び出しているマクロは、どのボタンも"メイン処理"マクロなんだけど、
"Application.Caller"で、呼び出したボタンの名前がわかるから、
それを使って処理分岐ができるのよ」
「コレ…便利っスね。
……これなら"メイン処理"マクロを見れば、どのボタンがどの処理を実行してるのか一発でわかるっス」
「でしょう~~ボタンが1つや2つの小さなツールなら必要ないけど、
10個も20個もあるような大きなシステムだと重宝するわよ~」
ちょうどそのとき、星くんが二人のところにやってきました。
「それじゃ悪いけど、今日はこれで失礼するよ。
勉強会、中止になっちゃって悪いね……」
「いいなあ~~星さんと泉さん。
若と飲めるなんて。
森川くん、あたしたち残業して、も少し勉強してこっか?」
「いいんですか!?
もちろん大丈夫です!
よろしくお願いしますっス!!」
「星くーん!
もう車出すから早く来いって、部長がおかんむりだわよ!
何してんのよ」
「すみませーーん、すぐ行きまーす。
じゃ、よろしく頼んだよ」
星くんはそう言うと、ダッシュで事務所を後にします。
星くんがいなくなると、事務所の中が急にガランとします。
森川くんが辺りを見渡すと、残っているのは彼と岬さんの2人だけでした。
「(そっか、今日は金曜日か……残業してるの、俺と先輩の二人だけじゃん。
…こ、これって、チャンスなのでは……!?)」
にわかに、森川くんの胸がドキドキと波打ちます。
「こ、このApplication.Callerの"Application"って、一体なんなんです?」
彼は動悸をごまかすように、平静を装いながらコードについて尋ねるのでした。