キミはいつも元気ね
「(やった!…朝から、いい感触だぞ!)」
森川くんは嬉しそうに頬を染めます。
若干、皮肉のこもった返しでしたが、先輩に好印象を持たれたと彼は解釈したようです。
「昨日渡したテキスト、読んでみた?」
「はい!まだベーシックだけですけど、目を通してみたっス」
「ほうほう。どのあたり目を通したの?」
森川くんは、テキストの目次を開き、指をさします。
「えっとですね。
…1章の"マクロとVBAの概念"、4章の"VBAの構文"、6章の"セルの操作"、
9章の"ブックとシートの操作"は、ざっと目を通しました」
「すごいじゃない。
2章の"マクロ記録"は、読んでみなかったの?」
「はい。これって、操作を自動でコード化する機能のことですよね……」
本当は、9章の途中で眠ってしまったのですが、
森川くんは岬さんにいいところを見せようと、つい見栄をはってしまいました。
そんな二人の様子を、少し離れた席から遠目に眺めていた星くんは、
ウンウンとうなずくとパソコンのモニターに目を移します。
「(よかった。岬さんと森川くん、うまくやってるみたいだな……)」