岬さんの思い出
「彼女、優秀だったもんなあ…。
VBAの件がなければ、あのまま総務にいてくれたらと思うよ。ほんと」
「ふふん。何しろ、指導係が優秀でしたからね」
水木さんは梶田部長の方を振り向くと、ドヤ顔をします。彼女と目があうと、梶田部長は苦笑しました。
「そうだったな、キミが指導係をしてたんだっけ…。
彼女も業務部で、得意のVBAで活躍している様子だし。
まあ、よかったんだろうなあ…」
「彼女を業務部に推薦したの、あたしですよ部長。
VBAを独学で、あんなに熱心に勉強してる新人なんて、わが社始まって以来じゃないですか?
本人もすごく、喜んでましたし」
水木さんがカタカタと、キーボードを叩きながらそう答えます。
「……VBAねえ。まあ、確かに便利なんだろうけどねえ…」
梶田部長は細い目をさらに細めながら、苦々しげにそうつぶやきます。