もっといい店が…
その頃社長室では、今夜の飲み会の件で、若と社長が話をしています。
「なんだ、そんな店で飲むのか…。
もっといい店があるだろ、ふぐ料理の"てっちゃん"とか…」
「そんなとこで飲んだら、かえって緊張するだろ。
この手の集まりは、駅前のスエ吉あたりがちょうどいいんだよ。
あそこ、混まないし…」
不満そうな表情の社長に対して、若がお店の説明をしています。
「それで払いの方は、もちろんお前が出すんだよな?」
「当たり前だろ。
ちゃんと会議費の領収書をもらってくるよ」
社長は、まだ不安げな面持ちです。
「料理の方は大丈夫か?
もったいぶらずにジャンジャン注文しろよ。
……行きと帰りの足はどうするんだ?」
「…泉さんが参加するから、オーダーは彼女にまかせるよ。
足はオーグチさんが用意するし、帰りは駅で解散するから大丈夫だよ」
若は腰に手を当て、ため息をつきながらそう答えました。