何か、いいアイデアが?
森川くんが唐突に口を開きました。
泉先輩、岬さん、星くんの3人は一斉に振り返り、彼に視線を向けます。
「何か、いいアイデアでもあるのかい?」
「こうすれば、いいんじゃないっスかね?」
森川くんはPCを使って、説明を始めました。
「上から順番にデータを見ていくんですが…、まず対象行の全てのセルの値を連結します。
次にInStrを使って、連結した値の中にキーワードが含まれているかを判定し、
"含まれていない"ときに、その行を非表示にしてやれば、いいんじゃないっスかね?」
3人はポカンとした顔で、モニターを見つめます。
「…なるほどなあ、こいつは目からウロコだよ。
こんな簡単なこと、なんで思いつかなかったんだろ?」
「…森川くんは大学でプログラムの勉強をしてるから、こういった発想がすぐ浮かぶのかも……
ちょっと、悔しいわね」
岬さんがため息をつく隣では、泉先輩が無念そうな顔をしています。
「森川くん。この案件、チャレンジしてみるかい?
初めての開発には、ちょっと荷が重いかもだけど…、
そこは岬さんがフォローしてあげるということで」
「え!?自分が開発しても、いいんですか?星主任!」
森川くんが、キラキラとした眼差しで星くんを見つめます。
「うん。VBAの学習も、かなり進んでるみたいだし。
そろそろ、実際の開発に携わってもいいんじゃないかな……
岬さん、アシストしてあげてくれる?」
「もちろんですよ、まかせてください!
森川くんの、初仕事…一緒に、がんばろうね!」
「よ、よろしくお願いしますっス!」
森川くんが、真っ赤な顔をして岬さんの言葉にうなずきました。