梶田部長は不満な様子
社長は、週末に若からシステム企画室の件で打診されていたことをふと思い出します。
「……こういったことが続くと、会社としていかがなものでしょう。
このまま放置していると発注ミスなど、大きな損失につながるようなことにならないかと心配です」
「(まあ…梶田くんにとっては、面白い話ではないだろうな)」
社長はため息をつきながら、
「…しかし、電算室がカバーできない細かい業務の効率化は誰かがやらなくては。
それにやはり、実際に作業をやっている人間でないと、わからない部分が多々あるだろう。
そういった意味では、彼らのVBAによる改善は理にかなってると思うが…」
そう答えます。この返答に、梶田部長は不満な様子です。
「まあ、会社のコンピュータを管理してるのは電算室ですし、
勝手にVBAで業務システムを作るなんて使い方を、こちらとしては許可した覚えなんてないわけですよ。
今後のことを考えると、いずれパソコンの使用方法を制限しなくちゃならんと思っております」
梶田さんは社長に一礼すると、スタスタと歩き去ります。
たまたま二人の姿を見かけて、廊下の角で聞き耳を立てていたオーグチさんが、
あわててその場を立ち去ります。
「(ふざっけんな…!仕事を効率化するのに業務部も総務部もあるか……!!)」
オーグチさんは、怒り心頭です。
「(こんな小さな会社で、くだらない勢力争いかよ。勘弁してくれ!
…しかし、若が社長の説得に失敗した今、こちらの打つ手も限られてくるなあ…。
早急に、岩田さんに相談しなくちゃ…)」
オーグチさんは固くこぶしを握りしめながら、廊下をズンズンと歩いていきます。