「おーい!八木~いるかい?」
「星か。今日はまた一段と早いじゃないか。まあ、あがれよ」
部屋にあがりこんだ星くんは今日、会社で起きたことを洗いざらい八木くんに報告しました。
「あはははは!そうか…そうきたか。さすが、おまえの部長はキレ者だな!」
「笑い事じゃないよ八木!いったい俺は来週からどーすればいいんだよ!」
ブンむくれた星くんが、八木くんにかみつきます。
「…なにいってんだ、星。
おまえの部長は俺が昨日話した、業務システムを開発する上で想定しうる困難や課題などを考慮し、
前もってそのようにおぜん立てしてきたんだろう?
もう、やれない理由などなにもないじゃないか。あとはおまえが、"やるか"、"やらないか"、だよ」
「…で、でも、俺はVBAの初心者だし…」
「いつまでそんなこといってるんだ、星!おまえはもう、VBAの初心者じゃないだろう!?」
星くんの言葉に、めずらしく八木くんが語気を強めます。
「…いいか、星。こういったことは、いつか誰かがやらなくちゃならないんだ。
おまえの会社では、おまえがその"役割"なんだろう。みんながおまえに期待してるんだ。
ならおまえは、その期待に応えるべきなんじゃないのかい?」
星くんは返す言葉がみつからず、思わずうつむいてしまいました。
「…でも、でも、どうやって進めていけばいいのか、さっぱりわからないんだよ。
VBAの開発ですら、ほとんど経験がないのに…プロジェクトだなんて…」
「ふう…」
八木くんが軽くため息をつきました。
「その岬って子のアシストは想定外だったけど…
おまえの先輩に改善効果の高そうな業務をピックアップさせるってのは正解だよ。
とりあえず、来週までにまだ時間がある。前におまえに渡したVBAの参考書。
とりあえず、その一冊だけでもキチンと全部読んで理解しておくんだ。
あとはピックアップされた業務の中身をみて、開発の優先順位をつけていこう。
…大丈夫だよ、おまえならやれるさ」
「…本当かい?本当にそう思うかい??」
星くんが、八木くんの目をまっすぐに見つめながらたずねます。
「…うん、大丈夫。おまえならやれるさ」
不思議なほど自信に満ちた表情で、八木くんはそう答えました。