翌日、出社した星くんはイの一番で岩田部長に報告を行いました。
そしてVBAが、ExcelやAccessの処理を自動化するための開発言語であること、
自動化することで業務効率が改善されること、
開発言語であるため習得にはそれなりの時間がかかること、
などを説明しました。
「そうか、VBAはプログラムの開発言語のことなのか。
いわゆる"BASIC"とか"COBOL"とかいうやつの親戚なんだな…。
それならマスターするのに時間がかかるというのも納得だ…。
よし!星、今日から業務の手が空いてるときは、VBAの勉強をしてもいいぞ!特別に許可する」
岩田部長が、得意げにそういいました。
「あ…ありがとうございます。部長」
複雑な顔をしながら、星くんは答えます。
(それって結局、俺の仕事が増えただけなんじゃあ…)
星くんは喉まで出かかった言葉をゴクリと飲み込みました。
終業時間も近づき、今日も八木くんのマンションに寄ろう…と星くんが考えていたときです。
「江口さん!これじゃあ困るのよ!」
泉先輩の大きな声が、オフィスに響き渡りました。
見ると、江口さんが泉先輩に怒られています。
「先輩。いったいどうしたんです?」
「あ、星くん。あのね。聞いてくれる?」
泉先輩の説明によると…、
Excelで作った品番リストの中から廃番になった品番のチェックを、江口さんにお願いしたそうです。
その際、廃番の項目の列に数字の"1"を入力するよう、江口さんに指示をしたということなんですが…。
「江口さんたら!数字を入力せずに、廃番になった品番のフォント色を赤に変えちゃったの!」
泉先輩はカンカンです。
「えっと…そのほうがわかりやすいかな~なんて思ったもんで…」
江口さんが頭をポリポリしながら答えます。
「だからそれじゃあ困るのよ!
数字を入力してと頼んだのは、後から廃番になった品番を並べ替えて操作したかったからなの!
フォント色を変えただけじゃあ並べ替えができないじゃない!」