「…と、まあこんな感じかな」
八木くんの解説がひととおり終わり、早速、星くんは質問しました。
「VBAからも、簡単にファイル操作ができることはわかったよ。
で、具体的にはどんなオブジェクトに、どんな処理をさせればいいんだい?」
「それを調べるのも、おまえの仕事じゃないか」
そっけなく答える八木くんに、星くんの口がポカンと開きっぱなしになりました。
「…とまあ、それではあまりにかわいそうか。
ええっと…、"Application.GetOpenFilename"、"Workbooks.Open"、"ActiveWorkbook.Close"、
このあたりをヘルプで調べ、[ファイルを開く]ダイアログボックスを表示し、
選択されたブックを開き、セルA1に"開いたよ!"の文字列を入力し、上書きして閉じる。
そんなプログラムを、明日会社で作ってくるんだ。これも期限は明日中だよ、いいかい?」
星くんは、あわててメモを取り出すと、八木くんが今いったことをカリカリとメモしました。
「ヘルプの調べ方はわかってるよな?
VBEのコードウィンドウにコードを記述、選択して[F1]キーを押すんだぞ。
そうすると、ヘルプが表示される。
あと…このコードは、今日作った"新オーダーアイテムをチェックする"プロシージャとは
別のプロシージャに記述するんだ。
間違っても、同じプロシージャ内に組み込んだらダメだぞ!
理由はまた後から説明するよ、ほかに何か質問はあるかい?」
八木くんは、星くんの顔をマジマジと見つめながら問いかけます。
「…いや、質問はないよ。
わかった、明日中にそのプログラムを作ればいいんだね」
星くんのあっさりした反応に、八木くんは拍子抜けします。
「そ、そうか…。質問はないか…。じゃあ、また明日な」
星くんを玄関まで見送りながらも、八木くんはどことなく心配そうです。
「…へ、ヘルプでわからなければ…こないだ貸した本でも、インターネットで調べてもいいんだぞ…」
「わかったよ。いつも、ありがとう八木。じゃ、また明日な」
星くんは軽く手を振りながら、八木くんの部屋を後にしました。
帰り道をさっそうと歩きながら星くんは…、
「(今まで八木のやり方で、間違っていた試しはないんだ。
だから、今回も大丈夫!とにかく、八木のいうとおりやってみよう!)」
…こんなことを考えていたのでした。