翌日、会社に出社した星くんのもとに、岬さんがかけよってきました。
「星さ~ん!印刷処理のプロシージャ、作ってきました~!!」
「お、おはよ…岬さん。約束通り1日で作ってくれたんだね、ありがとう」
星くんは早速、岬さんの作ったコードを確認します。
Sub 印刷処理()
Dim ret As Long
'印刷処理の実行確認
ret = MsgBox("処理の結果を印刷しますか?", vbYesNo)
'[はい]のとき印刷プレビューを表示
If ret = vbYes Then
ActiveSheet.PrintPreview
End If
End Sub
「プロシージャ名は適当につけたので、星さんのほうで変えてくださいね。
あと、いきなり印刷しちゃうとレイアウトとか調整できないんで、プレビュー表示するようにしておきました。
印刷してかまわないなら "ActiveSheet.PrintPreview" を "ActiveSheet.PrintOut" に変えてください。
あ、それと………」
岬さんの説明を聞いている星くんの表情が、みるみる真剣な顔つきに変わっていきます。
「(…これって、昨日八木が作ったプロシージャとほとんど同じじゃないか…。
それに今の説明も、八木が話した内容とほぼ同じだぞ…。
なんてこった…彼女は八木と同じか、それに近いくらいのVBAスキルを持ってるってことか…!?)」
星くんは一通り、岬さんの説明を聞き終わるといいました。
「ありがとう、岬さん。これでばっちりオッケーだよ。
今から早速、このプロシージャをシステムに組み込むから、岬さんは岩田部長の今日のスケジュールを聞いてきてくれるかな?
プロジェクトの状況を報告したいんだ」
「このプロシージャ、これでオッケーなんですね!!ああ…よかった!
…じゃあ今から部長に、今日のスケジュールを確認してきます。
少し待っててくださいね!」
そういうと岬さんは、パタパタと走り去っていきました。
星くんはすぐに、岬さんのプロシージャをシステムに組み込み始めます。
「(八木の作ったコードを、彼女に見せなくて正解だったな…。見せたらまた、
『ひっど~~~い!
星さん、あたしに作れっていったのに、心配だったから自分でも作ってきちゃったんですね~~~!!』
…なんて、怒られちゃうとこだったよ…)」
八木くんのコードをコメントアウトし、岬さんのコードに入れ替えたそのときです。
星くんは背中に異様な雰囲気を感じ、背筋をゾクゾクとさせました。