「星さん!今度あたしに、VBAのこと教えてくださいね!」
そういうと、岬さんは書類を持ってパタパタと事務所から出ていきました。
星くんは固まったまま、彼女の後姿をボーゼンと見送ります。
「なんてこった…彼女、VBAを知ってるぞ。それも俺なんかより、はるかに詳しそうだ…」
星くんのワキに、イヤな汗がジトーッとにじみます。
「…これじゃあ、いったいどっちがアシストなのか、よくわからないぞ…。
まいった…岬さんがVBAできるなんて…そんな話聞いてないよ」
星くんはトホーにくれた顔で、ふさぎ込んでしまいました。
「このままでいくと…」
ムクムクと悪い予感が首をもたげます。
「(…星!なんだおまえ、ちっとも役に立たないじゃないか!…それに比べて岬くんは優秀だな。
…今日から星、おまえが彼女のアシストに回れ!いいな!?)」
ヒーッ!思わず頭を抱えて身震いします。
「いくらなんでも、入社1年目の女の子のアシストなんてカッコ悪すぎるよ…
って、いくら岩田部長でもそれはないか…しかし…」
星くんの頭の中に、いろいろな考えが浮かんでは消えます。
「…ああ!こんなこと、いくら考えてたってしょーがない!」
星くんはブンブンと頭を振り、雑念を追い払います。
とりあえず岬さんのことは忘れて、目の前の課題に集中することにしました。