この日、泉先輩はめずらしく、会社の帰りに駅前の書店へ立ち寄りました。
店内に入りしばらくブラブラしていた彼女ですが、PC書籍のコーナーに来るとピタッと足が止まりました。
「(そういえば…星くん、最近がんばってるわね…)」
彼女の視線は自然と、"VBA"と書かれた本のタイトルに注がれます。
「(VBAって…こんなにたくさん本があるんだ…へえー…)」
その中の一冊を手に取り、パラパラとめくり始めたときでした。
「…あれ!?泉さん…?おつかれさまです!」
気がつくと隣に、岬さんが立っていました。
「え!?…あ、み、岬さん!おつかれさま…」
あわてて本を棚に戻そうとする泉先輩に、
「あ!それって……VBAの本ですよね!
…ひょっとして泉さんも、VBAで開発されるんですか?」
岬さんが大きな声を出しました。
「…え!?あ、こ、これは、その…。あ、あたしまだ…用事があるから…。
それじゃ岬さん、お先に…」
泉先輩はどぎまぎしながらそういうと、そそくさと立ち去って行きました。
「(あ~~~びっくりした!なんで、あそこに岬さんがいるのよ…!!)」
店内にひとり残された岬さんは、泉先輩がさっきまで手にしていた本を眺めます。
タイトルからそれが、初心者向けに書かれたVBAの入門書であることがひと目でわかりました。
「ふ~ん」
岬さんは意味シンな微笑みを、口元に浮かべたのでした。