星くんは今度こそ、本当に頭を抱えて考え込んでしまいました。
「だめだ…いくら考えても、今のおれの実力では"Exit For"でループをぬけたかどうかを判定する条件式なんて、想像もつかない…。なんだよ八木…、今のおれの実力で作れるんじゃなかったのかよ!」
星くんは、がっくりと肩を落としうなだれてしまいました。そんなとき。
「はい。星くんこれ。コーヒーでも飲んで一休みしたら?」
泉先輩がカチャリと、星くんの机にコーヒーを置きます。
「…えっ!?このコーヒー、先輩がわざわざ俺のためにいれてきてくれたんですか?」
「まさか。さっききたお客さんのコーヒーが1つ余ったから持ってきてあげたのよ。いらないの?」
「…いっいえ。いただきます。ありがとうございます」
泉先輩はPCの画面をチラリと見ると、
「…ふーん。なかなかがんばってるじゃない、星くん」
そういって立ち去っていきました。
星くんは、泉先輩がもってきてくれたコーヒーで一服します。
「なんだ、わざわざ俺のためにいれてくれたんじゃなかったのか。でもまあいいや。
たまたまお客さんのコーヒーが余ったから、こーして俺がそれを飲んでるわけで………」
ハッと、なにかにひらめいた星くんは、コーヒーカップをじっと見つめます。
「まてよ…お客さんのコーヒーが余らなかったらこのコーヒーはここにない…余ったからここにある…。
"Exit For"をぬけなかったらコーヒーを持ってこない…ぬけたらコーヒーを持ってくる…。
これってなにかに似ているぞ…」
ポンと手をたたき、星くんは大きな声を出しました。
「変数だ!"Exit For"をぬけたときは、変数に何か値を持たせるようにすればいいんだ!」
周囲の社員が驚いて、一斉に星くんのほうを振り返りました。