見慣れた日常の一コマ
ピンポーン。
星くんと岬さんは、八木くんの部屋のチャイムを鳴らします。
「やあ、二人ともいらっしゃい。
さあ、上がって上がって」
こんなやり取りも3人にとっては、もう見慣れた日常の一コマになっていました。
「八木さん!あたし、スタンダードの試験に合格したんですよ!!」
岬さんは開口一番に、試験結果の報告をしました。
「え、マジ!?すごいじゃないか岬さん。
…よくがんばったなあ」
八木くんは、自分のことのようにうれしそうです。
「…えっと、これ。
いつも、勉強見てもらってるんで…」
彼女はガサガサと、カバンの中から紙袋を取り出します。
「…コーヒーです。トラジャがお好きなんですよね!
私の行きつけの喫茶店の豆、おいしいんですよ~」
八木くんは紙袋を受け取ると、顔を少し赤らめてポリポリと頭をかきました。
「すんません、なんか気を使ってもらっちゃって…。
じゃ早速、いただいた豆で八木特製ブレンドをいれてきます」
八木くんは立ち上がると、紙袋を持ってキッチンの方に入っていきます。
星くんは岬さんの方を向いて、小声で話しかけます。
「…岬さん。八木のコーヒーの好み、よくわかったね」
岬さんは口元をおさえながら、クスッと笑います。
「はい。毎回ごちそうになってるんですもの。
もう、覚えちゃいました」
キッチンの方からトラジャの、なんともいえないかぐわしい香りが漂ってきました。