会社の第1会議室
「OLEオートメーションまで進んでるんだっけ?
あたしも早く、追いつかなきゃね!」
「そ、それは……」
星くんは情けない表情で、頭をポリポリとかきます。
ちょうどそのころ、会社の第1会議室では、岩田部長が熱弁をふるっていました。
「…ということで、業務部としては、星の次年度の主任昇進を強く希望するものです」
「…彼は入社4年目だろう?
いくらなんでも主任は、早すぎるのではないのかね?」
総務部長兼常務が、苦々しい表情でそうつぶやきます。
「しかし、彼は今年度のシステム開発で、第一級改善賞を受賞しております。
今日までに、8件の業務システムが開発され、現在も部内で運用中です」
岩田部長がメガネをくいと持ち上げながら、手元の資料を読み上げます。
「それはわかるが…、4年で主任昇進は前例がないんじゃないのかね?」
「いや、確か同じ業務部の小口くんが、4年で主任になってるはずですよ」
製造部長が、横から口をはさみます。
「業務部はシステム開発が仕事ではないだろう?
電算室なら、総務部の中にちゃんとあるんだから」
総務部長の一言に、会議室に重たい空気が流れました。
この会議は、次年度の人事を決定するための経営戦略会議です。
「…しかし逆に言えば、アレだ。
入社4年でこれだけの実績を上げた社員は、今までにいなかった…ということではないのかね?
組織の垣根を越えた彼の活躍に、私は大きく期待を寄せているのだが…」
ここで、社長の鶴の一声が入りました。
役員一同、顔を伏せ反論するものは誰一人いません。
「では星は、次年度より"主任に昇進"ということで、皆さんよろしいですかな?」
岩田部長が、静かにそうたずねます。
異を唱える者はなく、この瞬間、星くんの主任昇進が決定しました。