2Aの会議室に来るように
翌日、星くんが出社すると、岬さんが申し訳なさそうな顔で、近寄ってきます。
「…星さん。あのう……」
そのとき、江口さんが勢いよく事務所のドアを開けて入ってきました。
「おはようございます、星さん!
岩田部長が、2Aの会議室に来てくれって言ってますよ!」
「お、おはよう江口さん。
…部長が会議室に?…なんだろ?」
星くんの隣にいる岬さんの顔が、みるみるうちにドンヨリと曇っていきます。
「星です。失礼します」
星くんが、会議室のドアをノックして開きます。
「来たか、星。まあ、座れ」
岩田部長は手招きをして、星くんを会議室の中に招き入れます。
「星、単刀直入に言おう。
お前の友人に八木という、フリーターで、VBAの達者な人物がいるだろう?
これに関しては、間違いないか?」
イスに座りかけた星くんは、そのままイスから転げ落ちそうになりました。
「…な、なんで部長が、八木のことを知ってるんです!?」
「そんなことはどうでもいい。間違いないんだな?」
星くんの額に汗がにじみます。
「…は、はい。
八木は、仲間内で"VBAの達人"と呼ばれるほど、優れた知識と技術をもっている男です。
それが……なにか?」
「岬くんと比べてみて、彼の実力はどうだ?」
「…お、おそらく岬さんと比べても、八木の方がはるかに上かと…」
「!!…岬くんと比べてもか?そいつは、すごい!」
星くんは部長が、自分ではなく岬さんと比較したことが引っかかりましたが、表に出さないようにします。