次は、いよいよ…
いれたての八木特製ブレンドを味わいながら、八木くんが星くんの顔をまっすぐに見つめます。
「…次は、いよいよおまえだな。星。」
「うん。ベーシックで一通り体験したから、試験の準備や学習の進め方については大丈夫。
あとは、ひたすら勉強するだけだ。イケると思うよ」
八木くんは目を細めながら、ウンウンとうなずきます。
「岬さんは、どうします?
これからも勉強会、続けますか?」
彼女は飲みかけのカップをテーブルに戻し、真剣な表情で八木くんを見つめます。
「はい!八木さんさえよければ、ぜひ続けさせてください。
…星さんがスタンダードに合格した後も、週に何回か…こうやって勉強会がしたいです」
八木くんはニヤけてくる表情を、必死に抑えながら、
「いやもう。岬さんさえよければ、この先もずっとここに来てください」
と答えました。
ガランとした事務所の中に岩田部長が一人、パソコンの画面を見つめながら、もの思いにふけっています。
画面には以前、星くんが開発した生産計画管理システムのソースコードが、表示されています。
「…岬くんがスタンダード合格か。
泉くんもベーシックをとってるし、おそらく星も、数週間でスタンダードをとるだろう。
…こう言っちゃなんだが、星も岬くんも特別なプログラムの才能を持っている
……というわけではなさそうだ。
………つまりVBAというのは、個人差こそあれ勉強すれば誰でも、
ある程度使えるようになるプログラミング言語…というわけか」
岩田部長が、フンと鼻を鳴らします。
「…この生産計画管理システム。
第一級改善賞までとった代物だが…今ではすっかりうちのエース級のシステムだ。
これなしではもう、業務が回らないといっても過言じゃない。
…星はこれを、ベーシックに合格する前に作りあげた。
今ならさらに、レベルの高いシステムを開発できることだろう…」
岩田部長は腕を組み、む~~ん、とつぶやきながら天井を見上げます。