スタンダードは受験しないんじゃ
4人は部屋の中で、めいめい好きな場所に腰を下ろしました。
八木くんの部屋がいつもより、狭く感じられます。
「先輩…。どうして急に、勉強会に参加する気になったんです?」
「…ん。まあ、ちょっとね」
そう言うと泉先輩は、カバンの中からスタンダードのテキストを取り出しました。
「え?…先輩、スタンダードは受験しないって言ってたんじゃ…」
「うん。そのつもりだったんだけど、ベーシックみたいにテキストだけ読んで受かるのなら、
受けてもいいかなって……とりあえず買ってみたのよ」
「…で、どうでした?」
泉先輩が、星くんをにらみつけます。
「読んでみたけど、全…然っ!チンプンカンプンだったわ!!
……あんまりワケわからなくて頭にきたもんだから、少し勉強しようかなって思って」
八木くんは、あっけにとられながら泉先輩を見ています。
「(なんていうか…星に、聞いてたとおりの人だなあ……それに、美人だな…)」
八木くんの視線に気がついた泉先輩は、ぺこりと頭を下げます。
「…こんな理由で、なんかすみません。
ご迷惑でなければ、私にも教えていただけますか?」
八木くんは両手をブンブンふって、しどろもどろに答えます。
「い、いえ、迷惑だなんてそんな……勉強会のメンバーが増えるのは大歓迎です」
「本当ですか!?…よかった!!」
泉先輩がにっこりとほほ笑みます。
「(彼が、八木なんちゃらくんか。
星くんと同じ年のはずだけど…大人びてるわね。
……というより、かなり老けてる?)」