セミナー講師になりたいの!?
「…え!?ひょっとして、岬さん、本当にセミナー講師になりたいの!!??」
星くんが、すっとんきょうな声を上げると、岬さんは人差し指を立て、シーッとジェスチャーします。
「…いや、自分でもなんていうか、よくわからないんです…。
今までそんなこと、考えたこともなかったので…」
星くんは、ウーンと唸りながら腕を組みました。
「確かに、岬さんの教え方はすごく上手だったよ。
…八木と比べても、遜色ないくらい。
でもなあ、いきなりセミナー講師だなんて……」
「よくわかんないんです、ホント。すみません」
2人は向き合ったまま、押し黙ってしまいます。
しばらくすると星くんは、何かを思いついたかのように、ポンとヒザを叩きました。
「……ひょっとして、岬さん。
セミナー講師になりたいんじゃなくて、人にVBAを教えるのが好きなだけ…なんじゃないの?」
星くんがそういうと、岬さんもハッとした顔をしました。
「確かにそうかもしれないですね。
VBAを教えてたら、すごく楽しくて…"これが仕事だったらなあ"って思ったんですけど…。
セミナー講師に限らず、VBAを教える仕事だったら、なんでもいいんだと思います」
星くんはホッとした表情で、胸をなでおろします。
「なら、もう少しお待ちよ。
ほら、岩田部長が今後、新メンバーを増やしていくって言ってたじゃないか。
その教育係を岬さんができるよう、部長に推薦してあげるよ。
開発との掛け持ちも多少あるかもしれないけど、できるだけそっちをメインでやれるように、頼んでみる」
「ホントですか!?…あ、ありがとうございます!!」
今度は星くんが、人差し指を立ててジェスチャーをしました。
「そろそろ、戻ろうよ。
こんなとこ江口さんに見られたら、また会社中に言いふらされちゃうよ」
「別に?あたしはかまいませんよ?」
ブホッ…!!岬さんの言葉に、星くんは勢いよく咳き込みました。